| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-370 (Poster presentation)
外来種の駆除活動を持続的に行うためには、科学的根拠に基づいたわかりやすい目標基準を設定することが重要である。しかし、多くの場合で外来種侵入以前の在来生態系の情報が欠落しており、明確な目標基準の設定は難しい。本研究では、外来種対策の有効性を定量的に評価する方法として、長期モニタリングから在来種の環境収容力を推定する方法を提案する。
奄美大島では多くの固有種を回復させるために、2000年から環境省による外来種マングースの根絶事業が実施されている。本研究では2003~11年の4時期で調査を行い、固有種4種(アマミノクロウサギ、アマミハナサキガエル、オットンガエル、アマミイシカワガエル)の回復過程を評価した。まず、観察個体数を目的変数とした一般化線形混合モデルを解析し、マングースの減少により全4種が増加したことがわかった。次に、個体数変化率に対する密度効果の影響を非線形混合効果モデルで解析したところ、アマミイシカワガエル以外の3種で環境収容力が検出された。最後に、推定された環境収容力を用いて回復の達成度を評価したところ、2011年の個体数は全体としては環境収容力の90%以上に回復していたが、局所レベルでは対象地点のうちの約半分が環境収容力の50%以下であった。今後はマングース密度のさらなる低下を目指すと同時に、達成度の低かった地域での固有種の回復を重点的に調べることが重要だろう。