| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-372 (Poster presentation)
外来の哺乳類の中には、ねぐらや営巣場所として樹洞を利用する種が数多く存在する。そのような種は、樹洞の利用を介して在来の樹洞営巣性鳥類に何らかの影響を及ぼしていると考えられる。このような樹洞を介した種間関係は、在来生物の保護・管理のために重要な情報であるが、今まで評価されてこなかった。本研究では、外来の樹洞利用哺乳類と在来の樹洞営巣性鳥類との樹洞をめぐる資源競争について、外来アライグマと在来フクロウを例に検討した。アライグマは夜行性であり、季節によっては日中の大部分を樹洞で過ごすため、フクロウと資源利用形態が大きく重なる。本研究では、大型樹洞が十分に存在する北海道の野幌森林公園において、両種の樹洞に対する選好性を明らかにし、それらを比較することで潜在的な競争関係を評価した。合計383個の樹洞を観察したところ、アライグマ36個、フクロウ32個の利用が確認された。両種ともに非常に多様な形状(入口の大きさ、地面からの高さ、深さetc.)の樹洞を利用していた。両種の樹洞選好性を比較したところ、大きな重複が見られた。また、フクロウが利用していた樹洞をアライグマが利用するというように、両種が同じ樹洞を利用する例も観察された。以上より、アライグマはフクロウの潜在的な競争相手となりうることが示唆された。特に、樹洞の利用可能量が制限されるような森林では、フクロウに対する顕著な影響が見られると考えられる。また、アライグマは幅広い形状の樹洞を利用していた。特に高さに関しては、樹上18m付近の樹洞の利用が確認され、アライグマの高い木登り能力が示された。アライグマの日和見的な樹洞利用と高い木登り能力は、本種がフクロウのみならず多様な在来樹洞営巣性鳥類に影響を与える可能性を示唆している。