| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-374 (Poster presentation)
北米原産のマメ科高木種であるニセアカシアは、鉱山跡地の治山緑化や蜜源植物、肥料木などの目的で導入された。しかし、過去の植栽地から逸出することによる在来生態系への影響が懸念されている。ニセアカシアはクローナル植物であり栄養繁殖と種子繁殖を行う。ニセアカシアの侵入が見られる生態系を管理するためには、この両方の繁殖特性を明らかにする必要がある。今回の研究では、ニセアカシアの侵入が著しい海岸マツ林と河畔林を対象として、種子生産について調査した。海岸マツ林と河畔林では、撹乱の頻度や強度、ニセアカシアの生育環境や栄養繁殖の状況など様々な違いがあると考えられる。本研究では埋土種子と結果率に着目し、この二つの生態系での種子生産に違いがあるのかを明らかにすることを目的として、光条件や局所密度が種子生産に影響するかを検討した。
調査対象は、秋田市にある秋田県立大学周辺の海岸マツ林内の7集団と雄物川中流域の河畔林5集団とした。埋土種子量を調べるため、各集団でランダムに選定した対象木の樹冠下4方位から20 cm×20 cm×5 cmの土壌サンプルを採取し、土壌中の種子を数えた。結果率を求めるため、6月に4 m程度までの高さで枝を10本程度選定し花数を数え、10月にさやを採取し数えた。また、さや中の種子の状態も観察した。10 m前後の高らからもさやを採取し種子の状態を観察した。枝の位置の光条件を相対光量子束密度により評価し、局所密度を対象木の半径15 m以内の同種の胸高断面積合計とした。
その結果、河畔林の方が、埋土種子量と結果率ともに有意に高い値を示した。埋土種子量に対しては光条件と対象木の幹サイズ・局所密度が、結果率には光条件が影響していると示唆された。今回の結果から生態系の違いによるニセアカシアの種子生産について考察する。