| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-001 (Poster presentation)

多雪山地渓流沿いに成立する森林群落の樹木組成と地形の対応

*斉藤真人, 近藤博史, 若松伸彦, 酒井暁子(横浜国立大学・環境情報), 鈴木和次郎(只見町ブナセンター)

これまで多くの渓畔林に関する研究が行われており、樹木の更新に対する撹乱の重要性や、樹木分布と地形の関係などが明らかにされている。しかし、先行研究の多くが少雪地で行われており、多雪地の山地渓流沿いの森林については不明な点が多い。そこで本研究では、多雪山地渓流沿いに成立する森林の樹木組成や樹木分布と地形の関係を明らかにすることを目的とした。

調査は日本有数の豪雪地帯である福島県只見町で行った。冷温帯域の5箇所の流域に調査区を設定し、各調査区の中に流路から斜面方向に10m×40mのプロットを合計19個設置し、毎木調査、基質の記録、地形測量を行った。

樹木組成に関しては、河川沿いにおいてもブナが優占することが特徴であり、少雪地の渓流沿いで優占するサワグルミ、トチノキなどが優占するプロットは限られていた。少雪地では一般的にみられるヤマハンノキ、フサザクラなどの先駆性樹種はどのプロットでも出現しなかった。また、調査地域の中でもより多雪の流域ほど出現種数が減少し、ブナの優占度が増加する傾向が見られた。

地形と樹木分布の関係に関しては、ブナの出現個体数と比高との間には関係性はみられず、河川沿いでも優占度が高かった。さらには河川撹乱を受けた砂礫地にもブナは定着していた。

これらのことから、多雪地の山地渓流沿いでは、少雪地とは異なり先駆的な高木種が欠如しており、空いたニッチに斜面の優占種であるブナが侵入している可能性が示唆された。


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