| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-003 (Poster presentation)

急峻な山岳地における樹木群集の集合規則 -系統的多様性を規定する地形要因-

*北川涼 (横国大・環境情報), 三村真紀子 (九大・理), 森章 (横国大・環境情報),酒井暁子(横国大・環境情報)

日本のような侵食が卓越する地域に発達する複雑な地形構造は、森林の群集組成に影響を及ぼすことが知られている。地形と森林構造の関係についてのこれまでの研究で、尾根-谷の地形傾度に沿って群集組成が変化することなどが明らかにされた。しかし、多くの研究は地形傾度上の種組成のパターンや分類された地形単位と森林群集の対応を記載したものに留まっており、地形傾度上の群集集合規則に言及した研究は少ない。

そこで本研究では、神奈川県丹沢山地において、急峻な地形に成立する森林の群集集合規則を明らかにするために、系統的多様性指標と地形要因の関係を解析した。

その結果、急傾斜、北向き斜面、土壌が浅いといった多くの植物にとってストレスの高い立地になるにつれて、群集構成種が特定の系統に制限され、一方、緩傾斜、南向き斜面、土壌の深い立地では、多様な系統の種によって群集が構成されるという、地形傾度に沿った系統的群集構造の連続的な変化が示された。前者は環境によるフィルタリング効果、後者は競争排除などの生物的要因が群集構造を規定していることを示唆している。したがって、地形傾度上の位置によって群集組成が異なる理由は、非生物的環境要因に応じた立地の選好性によるニッチ分化だけではなく、生物的な要因も含めた異なる群集形成のプロセスが作用した結果であると考えられる。

また、地形傾度に沿った群集集合規則の変化は確認されたものの、多くの群集はランダムに近い構造を示すことも明らかになった。これは、種間関係や環境要因などの決定論的なプロセスだけではなく、先に定着した種の優先効果などの確率に依存したプロセスも群集構造に影響していると考えられる。


日本生態学会