| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-006 (Poster presentation)
鳥取砂丘はもともと東西16km,南北2kmの広さを有し,東側から福部砂丘,浜坂砂丘,湖山砂丘,末恒砂丘の四つに区分されていた。第二次世界大戦後に大規模な植林活動が進められたが,浜坂砂丘東部,多鯰ヶ池北方では砂丘地が残され,天然記念物に指定されて多くの観光客が訪れている(以下,観光砂丘)。観光砂丘では現在,「草原化」を防ぐため継続的に除草作業が行われている。観光砂丘の西側につながる鳥取大学乾燥地研究センター内にも砂丘地(以下,乾地研砂丘)があり,ここは周辺の植林後,現在まで管理がされていない。海岸そばまで植林された福部砂丘を含め,本研究では,海岸から内陸に向かって海浜植生の群落構造がどのように変化するかを,過去の植林との関係から解析した。
調査は鳥取砂丘の観光砂丘(砂丘幅,約1km),乾地研砂丘(同,約200m),福部砂丘(同,約30m)の3ヶ所で行った。各調査地にそれぞれ海岸線から内陸に向けた3本の調査側線を設定し,海岸から10mごとに方形区を連続して設置し地形調査と植生調査を行った。乾地研砂丘と福部砂丘では植林地内まで調査測線を延長した。
3調査地の砂丘幅は大きく違っていたが,砂丘地に出現する海浜植物は,3調査地ともほぼ同じ種構成であった。ただし,観光砂丘ではケカモノハシやコウボウムギが,乾地研砂丘ではネコノシタ,ハマゴウ,カワラヨモギが多く見られ,優占種は異なっていた。乾地研砂丘では,コウボウムギやネコノシタから,カワラヨモギやケカモノハシ,ハマゴウやコウボウシバへと群落が変化する帯状構造が見られたが,観光砂丘と福部砂丘ではその傾向は弱かった。海岸林内では,海浜群落はわずかにコウボウシバなどが残っているだけだった。健全な海浜植生の維持には,ある程度の砂丘幅の確保と人の関与の縮小が必要と考えられる。