| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-008 (Poster presentation)
日本最大の湿地環境である水田は,水稲を栽培する場としてだけでなく,さまざまな生物にも利用されており,農業農村の生物多様性保全機能を発揮する場として重要である。例えば,主に耕作水田内に生育する水田雑草と呼ばれる植生にも絶滅危惧種を含む地域の水辺植生を反映した種群が見られることがある。河川の堆積作用により形成された沖積低地(河成低地)は,肥沃で地下水位も高いため水田に適しており,古くから水田開発されてきた。沖積低地に展開される水田の多くは,生産性向上のため,排水改良や大区画化などの土地改良が重ねられ,近代的な農業が営まれ,今後とも水稲生産の中心と位置づけられている。栃木県の鬼怒川中流域に広がる沖積低地水田には,かつての河川氾濫原に分布していたと考えられる準絶滅危惧植物のミズネコノオが残存しているが,すべての水田で見られるわけではない。そこで,食糧生産を担う中核的水田である沖積低地水田に見られる氾濫原植生の保全の方向性を検討するために,沖積低地の約1.3km×約1.7kmにわたる約640筆の水田を踏査しミズネコノオの発生の有無と発生量を把握した。そして,ミズネコノオの分布水田と旧河道,氾濫平野,低位面,下位面などの微地形およびダイズやソバなどの転作履歴や耕起体系・除草剤歴を含むほ場管理履歴などを重ね,ミズネコノオの分布を規定する要因についての検討を行った。