| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-009 (Poster presentation)

北ボルネオ・キナバル山における熱帯下部山地林の14年間の動態:地質と地形による変異

*澤田佳美,相場慎一郎(鹿児島大・院・理工),武生雅明(東京農大・地域環境),北山兼弘(京大院・農)

北ボルネオ・キナバル山の標高1700m周辺に成立する熱帯下部山地林では、土壌養分と地形の植生への相互作用を検討するため、第三紀堆積岩・第四紀堆積物・蛇紋岩地のそれぞれに尾根・斜面中部・斜面下部に永久調査区が設置されている。斜面下部における土壌リンの可給性は、第四紀堆積物>第三紀堆積岩>蛇紋岩の順に低下する。これらの調査区においてDBH5cm以上の樹木を対象として、1997~2007年の間2年ごとに毎木調査を行い、さらに4年後の2011年にも再調査した。

本研究では、14年間の毎木データを基に幹数密度、死亡・新規加入率の経年変化を明らかにし、その変動パターンを異なる地質と地形間で比較した。

その結果、エルニーニョによる干ばつ年を含む1997~1999年と2001~2005年の2つの期間で、幹数密度と死亡率が大きく変化する傾向がみられた。1997~1999年では、全調査区において幹数密度が低下し、死亡率が増加した。この死亡率を地質間で比較すると、死亡率が高い順に、第四紀堆積物>第三紀堆積岩>蛇紋岩となり、また、地質毎に地形間で比較すると、第四紀堆積物を除いた2つの地質では、尾根<斜面中部<斜面下部の順に死亡率が増加した。ここでの死亡個体は、樹種による共通性はないものの、個体サイズについては小さい個体で死亡率が高かった。2001~2005年は、蛇紋岩地の3調査区で著しく幹数密度が低下し、死亡率が増加した。この期間に多く死亡した個体は属に共通性があり、3調査区ともにPodocarpusであった。また、ここでの死亡率は、斜面下部<斜面中部<尾根の順に増加する傾向がみられた。


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