| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-019 (Poster presentation)

栃木県岩船山に見られるツメレンゲ群落の種組成と生育環境

星直斗(栃木県立博物館)

希少種ツメレンゲ Orostachys japonica (Maxim.) A.Bergerはベンケイソウ科の多年草であり,栃木県版レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されている.栃木県南部に位置する岩船山(172m)は江戸時代から採石のある岩山であり,県内では限られたツメレンゲ群落の産地の一つである.本研究はこのツメレンゲ群落の中で遷移段階や立地環境が異なると思われるものについて,その種組成やツメレンゲの個体数と生育環境との対応関係について明らかにすることを目的とした.

Braun-Blanquet法(1964)を用いた植生調査,群落内のツメレンゲのシュート数とロゼット数の記録をした.環境傾度については方位・傾斜の測定と,群落下の土壌体積の推定を行った.また各調査区の遷移の度合いを表すものとして「草本層の(群落高×植被率)+低木層の(群落高×植被率)」を定義し空間占有度とした.調査は2012年10月25日から11月1日に行った.

得られた24の植生調査資料から素表を作成し表操作を行った結果,調査群落にはマルバヤハズソウ,ハマエノコロ,メガルカヤ,テリハノイバラ,エゾスナゴケなどが高常在度で出現するほか,種組成的にまとまりのある複数のグループが見られることが明らかとなった.この複数のグループは,構成種の休眠芽の位置や先に定義した空間占有度,土壌体積から,連続した異なる遷移段階に対応していることが推察された.遷移の初期から中期のグループではコケや地衣類,1-2年草が,後期では木本や多年草の出現が認められた.

また,ツメレンゲのロゼット数の密度はシュート数の密度と共に増加する傾向が見られたが,土壌体積の増加と共にロゼット数の密度は減少する傾向が見られた.露岩地で多く見られるロゼットやシュートは,遷移の進行と共に減少していくことが推察された.


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