| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-035 (Poster presentation)
光環境の違いとマングローブ林の群集構造
阿久津公祐 (琉球大・熱帯セ), 渡辺信 (琉球大・熱帯セ)
植物にとって光環境の違いは群集構造を決定する最も重要な要因の一つである.地上部に到達する光は直達光と散乱光に二分される. 直達光は晴れた日に地上まで直線状に到達する光である.散乱光は曇りの日の光であり、雲によって直達光が乱反射されたものである.地上部に到達する光の量は快晴の日に対して曇天の日はその1/7ほどになった.光量以外にも直達光と散乱光には性質の違いがある.直達光はその直進性ゆえに林冠部が受ける光の量と林床部における光の量に30倍ほどの著しい違いがあったが、散乱光は様々な方向から林内に入射するため、その差は7倍ほどの違いしかなかった.また、直達光と散乱光には光の質の違い、光の波長領域特性に違いがあり、光合成に利用出来ない波長である近赤光量に対する光合成に利用可能な赤色光の割合(R/FR比)は、直達光に対して散乱光の割合が大きいほど増加した.曇りの日の方が光の質としては光合成に適しているということになる.晴れの日と曇りの日における光環境は量と質とで正反対の性質を持っている.
マングローブは、汽水域に生息する塩分に対して強い耐性を持つ樹木である.西表島の船浦湾では特に強光条件である河川前面にヤエヤマヒルギが優占し、内陸に進むにつれオヒルギが優占する群集構造が見られる.船浦湾におけるヤエヤマヒルギとオヒルギが混生する林内において、光環境を測定し光環境の変化と群集構成の違いにどれほどの対応関係があるかを今大会では発表する.光環境は直達光と散乱光条件の違いを考慮し、またマングローブにおいては特に幼樹の生存率に着目し解析を行った.