| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-037 (Poster presentation)

多雪地域における絶滅危惧種コケ植物の分布と生育環境

白崎仁*(新潟薬大・薬・生物)

多雪地域にあたる新潟県およびその隣接地域において、環境省第4次レッドリスト(2012)のコケ植物の絶滅危惧I類(CR+EN) のコシノヤバネゴケ(蘚類:Dichelyma japonicum)、ミズゴケモドキ(苔類:Pleurozia purpurea)、ナンジャモンジャゴケ(蘚類:Takakia lepidozioides)と、準絶滅危惧(NT) のイチョウイキゴケ(苔類:Ricciocarpos natans)、およびオオミズゴケ(蘚類:Sphagnum palustre)の分布と生育環境を調査した。

環境要因と分布の関連性については、分布や植生の野外調査を続け、約12万件のコケ植物標本の分布情報と、約8万件の文献による分布情報データベースを作成した。分布座標と気象庁AMEDASの地域気象メッシュデータとを連携させて、各分布地点における、年平均気温、暖かさの指数、夏季と冬季の降水量、最深積雪量、および8月の可能蒸発散量を求め、環境要因に対する分布頻度を算出した。これを統計解析によって分布と環境要因の関連性を明らかにした。

ミズゴケモドキの生育地は急峻な尾根筋で、比較的積雪が少ない排水の良い所だが、気温が低くて強く乾燥しない環境で、生育期間は約4ヶ月ほどである。ナンジャモンジャゴケは多雪地域では谷間の急崖に生育しており、長期の積雪下で強く乾燥しない環境で、生育期間は4ヶ月ほどである。コシノヤバネゴケの分布は、8月の可能蒸発散量と暖かさの指数が比較的低い地域に、イチョウイキゴケの生育は、暖かさの指数が比較的高く、積雪の少ない地域に、オオミズゴケの分布は暖かさの指数と8月の可能蒸発散量が比較的低く、積雪のやや多い地域に限定されていると考えられる。


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