| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-040 (Poster presentation)

琉球列島及びフィリピンにおける海草シオニラの集団遺伝構造

*松木悠, 中島祐一, 練春蘭(東大ア生セ), Miguel Fortes (University of the Philippines), Wilfredo Uy (Mindanao States University), Wilfredo Campos (UP Visayas), 仲岡雅裕(北大FSC), 灘岡和夫(東工大院情報理工)

シオニラSyingodium isoetifoliumは、西太平洋からインド洋にかけての熱帯・温帯の沿岸域に広く生育する海草である。本種は地下茎を伸長させて広範囲に及ぶ藻場を形成し、同所的に生育する他の海草種とともに沿岸生態系における一次生産や物質循環などに重要な役割を果たしている。環境悪化が懸念されている東南アジア沿岸域において、生態系の維持・保全のための適切な対策を講じるためには、重要な構成要素である海草集団の繁殖様式や遺伝構造を把握することが不可欠である。本研究では、フィリピン諸島全域を網羅する22地点及び琉球諸島(沖縄、宮古、石垣、竹富、小浜、西表)11地点において、それぞれ平均40サンプルを採集し、マイクロサテライトマーカー10遺伝子座を用いて集団遺伝解析を行った。サンプル採集にあたっては、10m以上の間隔を空けてランダムにシュートを採集した。

各集団のヘテロ接合度の観察地は0.27から0.85、遺伝子座あたりの平均対立遺伝子数は1.6から4.7であった。クローン多様性 (Clonal richness)は、フィリピンの集団で多様性が高い傾向にあった。ペアワイズFSTで評価した集団間の遺伝的分化は比較的大きく、各集団が遺伝的に分化していることが示唆された。各集団間で遺伝的多様性や組成に違いがあったことは、生息環境や環境に応じて有性繁殖とクローン繁殖の割合が異なることを示唆しているものと考えられる。


日本生態学会