| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-044 (Poster presentation)
インドネシア中部カリマンタン州には熱帯泥炭湿地林、熱帯ヒース林といった特徴的な貧栄養土壌を持った森林が発達している。この地域では、幹線道路沿いの伐採・焼畑跡地などの開けた場所にAcacia mangiumが多く見られる。これらの樹木は地元住民による植林やその後の天然更新によって定着したものであるが、その後、管理されない状態で放置されている。雨季には冠水し、乾季には泥炭火災が起こる過酷な環境の影響により、その生育状態は他の地域で植林されているものと比較するとはかばかしくなく、場所によっては個体の葉の色に変異がみられ、黄色葉と緑色葉を持つ個体が確認されている。
そこで本研究では、異なる葉の色を持つA. mangiumについて、個葉の特性、樹木のアロメトリーなどの形態的な特徴、生育場所の土壌の質などに着目して比較を行った。
黄色葉を持っているA. mangiumは、緑色葉を持っている個体に比べて幹直径が細く、個体全体の葉の数が少なく、成長の阻害が起こっていると考えられる。A. mangiumの葉のターンオーバーは非常に早く、緑色葉から黄色葉への変異は容易に起こり、さらにその逆(黄色葉から緑色葉への変異)も見られることから、葉色は周囲の環境に敏感に反応しうると考えられる。また、これらの特徴を持つ個体が同じ場所にかたまって生育しており、幹線道路の左右でさえ、異なる葉色の個体がみられることから、生育場所への火入れなどによる局所的な土壌栄養の改変がA. mangiumの葉色の変異や成長に影響を与えていることが示唆された。