| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-046 (Poster presentation)
植物の遺伝子流動規模や分布拡大の過程は集団分化や種分化に深く関わり、特に島嶼においては、植物集団の固有性を形作る主要な要因となり得る。種子が海を渡って分布を拡大する海流散布植物については、島嶼間の遺伝子流動を詳細に取り扱った研究は少なく、あまり知見が蓄積されていない。
テリハボク(Calophyllum inophyllum)は南太平洋州近辺が起源と言われる海流散布植物で、熱帯・亜熱帯の海岸域に広く分布する。同種は耐寒性に乏しく、現在は日本の先島諸島が天然分布の北限域になっている。本研究では、台湾島から沖縄県の宮古島にかけてのほぼ全ての島から30~40個体の試料を採取し、EST-SSR15座を用いて遺伝的多様性および遺伝構造を明らかにすることで、海流散布による島間の遺伝子流動の規模を間接的に推定することを試みた。
遺伝的多様性は北限(宮古諸島)に向かうにつれて低くなる傾向にあり、南部からの分布拡大過程における創始者効果の作用などが推察された。また、島間の遺伝的分化は低く、Assignment testにおいても各島の10~30%の個体が他の集団(島)に振り分けられた。これらの結果から、島間の遺伝子流動がある程度の規模で成立してきたと考えられ、テリハボクの海流散布による分散能力が高いことが示唆された。