| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-054 (Poster presentation)

根に居住する菌類どうしの相互作用はホスト植物間の菌群集の分化を促すか?

山本哲史*, 佐藤博俊, 田邊晶史, 日高周, 門脇浩明, 東樹宏和 (京大・地球環境学堂)

植物は根で菌根菌やエンドファイト(内生菌)と共生している。菌根菌は土壌栄養をホスト植物へ与え、代わりに光合成産物を得る相利共生者である。エンドファイトの役割は未だ不明な点が多いが、近年では菌根菌とは異なる方法で土壌から栄養を集め植物へ渡すか、もしくは菌根菌が土壌中の栄養を吸収しやすくすることが示唆されている。

先行研究では菌根菌どうしはニッチが似ているために競争することが示唆されている。そのような菌間の相互作用は共生している植物個体の成長やホスト個体群の成長にも影響する可能性も示唆されている。そこで本研究では、菌根菌とエンドファイトの両方を網羅的に検出し、菌どうしの相互作用について研究した。

同所的に分布するQuercus属のコナラとアラカシそれぞれの実生を247、183個体の根を採集した。根からのDNA抽出物をテンプレートに、菌特異的なプライマーで核ITS領域をPCR増幅し、454パイロシーケンサーによって解析した。得られた塩基配列を基にDNAバーコーディング支援プログラムCLAIDENTを使い生物同定を行った結果、菌根菌が多数検出され、またエンドファイトと考えられるものも多数検出された。Checkerboard指数・Togetherness指数によって菌間の相互作用を解析した結果、菌根菌とエンドファイトは共存しやすいことが示唆された。これは、菌根菌とエンドファイトの共生方法が異なるために、根の空間を巡る競争が少ないためだと考えられる。また2つのホスト植物間で有意に相互作用の強度が異なる菌のペアも見つかった。


日本生態学会