| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-055 (Poster presentation)
光合成による独立栄養獲得と根に共生する菌,菌根菌を介した従属栄養獲得の両方を通して炭素源を得る植物を混合栄養性植物という.本研究では日本に広く分布する林床植物,イチヤクソウを対象として異なる光条件下における菌根共生関係と混合栄養性の可塑性を明らかにするため,根の顕微鏡観察とDNA解析,葉の安定同位体比を調べた.コナラ林から明所,暗所ぞれぞれからイチヤクソウを2か月に1度採取した.根への菌糸の感染,定着率を光学顕微鏡観察により評価した.共生菌の推定はバーコード領域とされるITS領域のダイレクトシークエンスを通して行った.周辺の独立栄養性,菌従属栄養性植物とともにイチヤクソウの葉のδ13C,δ15N安定同位体比を計測した.イチヤクソウは菌鞘を形成しないアーブトイド菌根を形成し,菌糸コイルの形成は春から夏にかけて多い傾向にあった.検出された菌の大部分は分類的に外生菌根菌であり,その84%はベニタケ属菌であった.菌根化率とベニタケ属菌の出現頻度は暗所で高い傾向にあった.δ13C,δ15Nは周辺植物に比べて有意に高く,炭素源の約50%を菌根菌に由来すると推定された.両安定同位体比は光量と負の有意な相関があり,暗所で菌従属性が高くなると示唆された.以上より,イチヤクソウに定着する菌根菌種と菌への依存度は光条件により変化すると考えられた.