| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-061 (Poster presentation)
マングローブは熱帯から亜熱帯地域の河口汽水域に広がる樹木郡の総称であり、複雑な生態系を持ち生物多様性が高い。また、津波被害の軽減効果や生産性が高いことなどからも、現存するマングローブ林の保護や再生への取り組みが東南アジアを中心に試みられている。マングローブ林の潮汐や塩分濃度などの物理環境条件は場所によって大きく異なるため、その生理生態学的特性を明らかにするためには様々な場所や条件でのデータの蓄積が重要である。特に日本に生育するマングローブは分布域の北半球高緯度限界ラインに位置し比較的厳しい生育環境であるが、単木・林分スケールでの蒸散特性の評価事例は存在しない。そこで本研究では、沖縄本島において、本地域の主要構成樹種であるメヒルギ、オヒルギの蒸散特性を明らかにし、他の地域及び他の樹種との違いを明らかにすることを目的とした。
本研究は、2012年7月に沖縄県金武町のマングローブ林において、メヒルギ(Kamdelia obovata)、オヒルギ(Bruguiera gymnorhiza)の各5本ずつで樹液流計測を行った。樹液流速はオヒルギ、メヒルギともに観測地の日射に伴って日変化し、オヒルギがメヒルギの約2倍大きかった。樹液流速には潮汐に伴う水位変動の影響は見られず、日射と良い相関を示した。気孔コンダクタンスの代わりに蒸散量を飽差で除したもので気孔応答をみたところ、メヒルギでは飽差が増加しても一定であったが、オヒルギではわずかに低下していた。これは本調査地の気温、飽差の日変化が小さく、日中の最大飽差も小さいことが一因であると考えられる。また、本研究で得られた日単木蒸散量は、既存のマングローブ植物の蒸散量に対して比較的小さかった。今後、さらに長期における観測を行い乾燥期間でも同様の結果を得られるか検討を行う必要がある。