| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-063 (Poster presentation)

カシ類7種の葉の寿命と生理特性

香山雅純(森林総研九州)

常緑性のカシ類は、九州の暖温帯常緑広葉樹林における主要な樹種であり、7種が分布している。常緑広葉樹の葉の寿命は種間で異なり、光環境や葉の厚さ、光合成特性や開葉様式などの影響を受ける (菊沢, 2005)。カシ類7種も種間でこれらの特性は異なっていることから、葉の寿命についても種間で異なることが予想される。本研究は、生育環境の等しい同一地域に植栽されたカシ類7種の葉の寿命を種間で比較し、葉の寿命を裏付ける要因を解明することを目的とした。

本研究は、宮崎市高岡町内の広葉樹試験地 (標高180m, 1996年植栽) に植栽されたアカガシ、ウラジロガシ、シラカシ、ツクバネガシ、イチイガシ、アラカシ、ハナガガシの計7樹種を対象とした。カシ類7種は、樹冠の2カ所 (4.0 m, 2.0 m) からシュートを選定し、2007年5月よりシュートに着いた葉の枚数を定期的に数えた。また、カシ7種の林床にリタートラップを設置し、毎月落葉を回収し、葉の落葉時期との対応を検討した。さらに、葉の寿命に関わる光環境やシュートの伸長、光合成特性も併せて検討した。

カシ類の葉の寿命は、種間で異なる傾向を示した。例えば厚い葉を形成するアカガシは、樹冠上部では葉の寿命が長く、2年後にも20%の葉が生存していたが、樹冠下部では1年後の秋に葉を一斉に落とす傾向を示した。一方、薄い葉を形成するハナガガシは、樹冠上部で葉の寿命が短く、1年後に半数の葉が落葉し、2年後にはすべての葉が落葉した。一方、樹冠下部では葉の寿命が長く、4年後にも20%の葉が生存していた。これらの傾向に対して光-光合成曲線を測定した結果、アカガシは初期勾配の角度が小さく、暗い環境における光合成能力が低かった。一方、ハナガガシは初期勾配の角度が大きく、光合成速度が飽和に達する光強度も小さいことから、暗い環境における光合成能力が高かった。


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