| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-067 (Poster presentation)
相対光環境7.4%に強度被陰された落葉広葉樹の3年生苗木における飽和光合成速度、伸長成長量の応答性を検討した。測定樹種は,ケヤキ、ミズナラ、コナラ、クリ、ブナ、シラカンバ、ミズメの7種で,飽和光合成速度,伸長成長量における相対光環境7.4%の値を100%の値で除した値(低下度)を指標とした。強度被陰下における地上部,地下部への物質配分,展開葉数,個葉の解剖学的構造が強度被陰下の飽和光合成速度,伸長成長量に影響与える重要な因子と考え,強度被陰下でのT/R率,相対展開葉数(相対光環境100%での展開葉数で7.4%の展開葉数を除した値),個葉の解剖学的構造として葉肉の厚さを測定し,飽和光合成速度,伸長成長量における低下度との関係を検討した。その結果,1)強度被陰下のT/R率と飽和光合成速度の低下度は高い負の相関が認められたことから,地下部を中心に物質配分されるほど飽和光合成速度の低下が低く抑えられることが明らかとなり,地上部,地下部への物質配分は飽和光合成速度に大きな影響与えていることが示唆された。2)伸長成長量においては,ケヤキ,ブナを除く5種では,T/R率と伸長成長量の低下度が負の相関,飽和光合成速度の低下度と伸長成長量の低下度が正の相関を示したことから,飽和光合成速度の応答を介して地上部,地下部への物質配分が伸長成長量に影響を与えていることが示唆された。3)ケヤキとブナにおいては,相対展開葉数が大きく,展開葉の葉肉の厚さが薄いほど伸長成長量の低下が抑えられる傾向を示したことから,強度被陰下における地上部,地下部への物質配分よりも相対展開葉数,展開葉の葉肉の厚さが伸長成長量の応答に大きな影響を与えている可能性が示唆された。