| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-069 (Poster presentation)
大気中のCO2濃度は産業革命以降上昇を続けており、今世紀末には500-1000 µmol mol-1に到達すると予想されている。CO2は植物にとって光合成の基質であり、CO2濃度の上昇は植物の光合成を増加させると予想される。しかし実際には、現存する植物では、高CO2環境で生育した場合に通常CO2環境で生育した場合よりも、高CO2濃度下での光合成能力が低下する現象が見られる。では、現存する植物に突然変異が生じた場合、高CO2環境で適応的であると考えられる高い光合成能力をもつ植物は進化するのだろうか?
本研究で我々は高CO2環境下で高い光合成能力をもつ突然変異体を単離するため、クロロフィル蛍光の測定を用いた新たなスクリーニング系を構築した。EMSで突然変異を誘発したシロイヌナズナのM2植物を800 µmol mol-1 CO2で17-18日間生育した。これらのM2植物の光合成の光化学系IIの量子収率を800 µmol mol-1 CO2で測定し、野生型よりも有意に高い光合成能力をもつ植物を突然変異体候補として単離した。ガス交換特性の解析の結果、高CO2環境下での光合成速度が有意に高い突然変異体1系統を単離した。これらの結果から、遺伝子の突然変異により高CO2環境に適応的な光合成能力をもつ植物への進化が引き起こされることが示唆された。現在、単離した突然変異体の変異原因遺伝子の同定を進めている。