| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-072 (Poster presentation)

異なる緯度におけるコナラ林冠葉の温度‐光合成関係に対する温暖化処理の影響

*山口大輔(東北大・生命),中路達郎,日浦 勉(北大・北方生物圏FSC),三島 大,中村こずえ(鳥取大・院),佐野淳之(鳥取大・農),彦坂幸毅(東北大・生命)

植物の多くの性質が温度の影響を受けるが、その応答は温度に対して直線的でないことが多く、同じ温度上昇でも、もともとの温度環境によって応答は大きく異なると考えられる。また、異なる温度環境にはその温度環境に適応したジェノタイプが生育し、互いに異なる温度応答をもつ可能性がある。本研究では、異なる緯度に生育するコナラの林冠葉に対して温暖化処理を施し、葉特性と温度-光合成関係に与える影響がどのように異なるかを調べた。

北海道大学苫小牧研究林(42°40′N、141°36′E、8月平均気温20.7℃)と鳥取大学蒜山の森(35°18′N、133°35′E、8月平均気温23.7℃)に自生するコナラ成木の大枝をアクリル板で囲み、中の温度を上昇させた(最大+4.5℃)。2012年6~8月にかけてそれぞれの葉についてガス交換測定を行った。

林冠葉が十分に成熟した8月には、温暖化処理にさらされた葉の光合成速度は、苫小牧ではどの測定温度でも若干増加したのに対し、蒜山では測定温度35℃のみ若干増加し、それ以下の測定温度では低下した。苫小牧では生育温度の上昇によってVcmaxの温度依存性が増加し、それにともない光合成の最適温度も上昇した。一方で、蒜山では生育温度の上昇にこれらのパラメータは応答しなかったが、高温で気孔コンダクタンスが相対的に高くなったことにより、なだらかな温度-光合成曲線へと変化した。

苫小牧・蒜山ともに温暖化処理によって高温での光合成速度が高くなるように温度応答は変化したが、生育温度の変化に対する温度-光合成曲線の形の変化は緯度間で大きく異なっていた。これらの結果は、温暖化が森林の炭素収支へ与える影響は緯度環境によって違うことを示唆している。


日本生態学会