| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-075 (Poster presentation)
照葉樹林はギャップ形成により,下層に待機していた高木種の幼樹の成長が促進され更新すると考えられている。しかし,これらの幼樹はギャップ形成時に強光に曝される急激な光環境変動により,葉にダメージを受けるであろう。葉が被るダメージが成長に与える影響を調べた。シイ・カシ類とイスノキ,クスノキ,ヤブツバキなど照葉樹林を形成する14種の実生の冬と夏の急激な光環境変動に対する葉の反応と成長反応を調べた。ポット植えの当年実生を3段階の被陰下(相対照度6,16,44%)で9月に栽培を開始し,一部を冬(発芽翌年の1月)に、一部を夏(同8月)に裸地へ移動させ、同10月まで栽培し、葉数の変化と強光阻害の程度(Fv/Fm)を追跡するとともに,成長パラメーターを決定した。
裸地に移動させた植物は夏よりも冬の方が強くダメージを受けた。裸地に出した直後に急激に低下したFv/Fmが夏はいずれの種も2週間ほどで回復したのに対し,冬は3ヶ月程度低下し,そのまま落葉した種(クスノキ,シリブカガシなど)と,温暖な季節になってFv/Fmが回復した種(アカガシなど)があった。夏には落葉はほとんど見られなかった。また,夏も冬も暗い被陰区から裸地に移動した個体の方が強いダメージを受けた。葉がダメージを受ける一方で,RGRが大きな種は2年目葉を多く出葉していた。
我々の前回発表では,終止被陰条件(相対照度6,16,44%)で栽培した場合,いずれの光条件においてもRGRの種順位はほぼ一定であることを報告した。光環境の変動があった場合において,被陰下で成長する場合よりもRGRが大きくなる種,小さくなる種の両方があったが,RGRの種順位は終止被陰条件とほとんど変わらなかった。