| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-079 (Poster presentation)
光合成は植物の成長を介して全生物の生存を支えており、炭素循環の担い手でもある。光合成を測定・モニタリングする事は農林作物の生育状態の観察や将来の大気CO2濃度の上昇・温暖化予測に欠かせない。パルス変調技術(PAM)に代表されるクロロフィル(Chl)蛍光測定法は、光合成活性(主に光化学系(PS)II活性)を非破壊的に短時間で測定できるため、世界的に様々なレベルの分野で利用されている。
しかし、高等植物を測定する場合、葉の表側から測定光を当てて蛍光を測るだけのため、葉のどの深さの情報を得ているのか明らかでない。葉の内部には葉緑体の吸光により、群落と同様に光勾配が存在する。そのため、葉の表側の葉緑体は十分な光を受けていても、裏側の葉緑体は十分な光を受けていないという場合が往々に存在し、Chl蛍光法に誤差をもたらしていると考えられる。
そこで、本研究では下記の二つの測定法を考案し、Chl蛍光法によるPSII活性の測定誤差を評価した。一つは葉内に極細光ファイバーをマイクロメートル単位で挿入して行く方法で、葉内の各深さでChl蛍光を測定可能になった。もう一つは、P700(PSI反応中心Chl)酸化還元シグナルを利用する方法で、近赤外域の吸光度の変化を利用するため、Chl等の葉の色素による測定光の減衰がほとんど起こらず、全葉組織的な光合成活性の測定が可能になった。
ホウレンソウとトウガラシの葉を光阻害処理し、上記の三つの方法でPSII活性を測定・比較したところ、赤色測定光を使用しているChl蛍光測定装置は光合成活性の過大評価を、青色測定光を使用している装置は過小評価をしている事が明らかになった。それぞれ、葉の深い部分と浅い部分を測定しているためだと考えられた。