| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-080 (Poster presentation)
植物の形質は、その自生地の環境と密接な関係があると考えられている。すなわち、自生地の環境条件に適していない表現型をもつ植物は排除され、特定の範囲内の表現型をもつ植物のみが生存でき、フィルターとなる環境とその対象となる形質の間には相関があることが期待される。これまでに、野外において環境と形質の関係について様々な研究が行われてきたが、野外で取得できるデータには限りがあり、その理解は十分ではない。我々は、世界の様々な緯度・標高に自生するシロイヌナズナの44エコタイプについて二つのCO2濃度で成長解析とガス交換測定を行い、炭素・窒素・水分の獲得・利用にかかわる様々な形質を調べた。さらに、各ジェノタイプの生息地地理環境(標高・緯度・経度)と気象環境(気温・飽差等)を推定し、生息地環境と形質の間の相関係数を元に生息地環境と形質の関係について評価した。生息地環境の違いによる表現型の違いは複数の形質で見られ、CO2濃度により相関が検出される場合とされない場合があった。例えば、光合成速度と飽差の相関に着目すると、通常大気条件下での弱光下での光合成速度は一年のうち最も飽差が低い月の飽差の平均値と負の相関を示したが、この飽差と光合成速度の関係は高CO2条件では有意な相関は見られなかった。一方で、強光下の光合成速度はCO2濃度条件に依存せずに飽差の年間の分散と負の相関を示した。また、これまでの解析ではCO2濃度によって相関係数の正負が異なる形質は検出されていない。現在、形質と生息地環境について多変量解析を行っており、その結果もあわせて報告したい。