| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-082 (Poster presentation)

スギ樹冠葉の光合成能力の季節変化

*飛田博順,北尾光俊,齊藤哲,川崎達郎,壁谷大介,矢崎健一,小松雅史,梶本卓也(森林総研)

現在,スギ人工林のバイオマス蓄積が充実してきているが,経営上の問題等のため管理不充分な林分が多く残されている。そのため,長伐期への誘導など,施業法の再検討が必要とされている。適切な施業法を考える際には,施業に伴う生育環境条件の変化に対するスギの成長予測が求められる。しかし,成長予測の上で必要となるスギの光合成能力に関する情報は,他の針葉樹や落葉広葉樹に比べて不足している。そこで本研究では,スギ成木樹冠葉の光合成能力の季節変化を明らかにすることを目的とした。茨城県の森林総合研究所千代田苗畑に生育する樹高約10 mのスギ成木の樹冠上層と下層の針葉の光合成活性を測定した。測定は約2ヶ月間隔で1年間,人工光源付きの針葉樹用チャンバー(LI-6400-18,-22H)を備えた携帯型光合成蒸散測定装置(LI-6400)を用いて行った。測定には切り枝(シュート)を用いた。実験室内で葉内間隙二酸化炭素濃度と光飽和光合成速度との関係を求め,25度での最大炭酸固定速度(Vcmax25)と最大電子伝達速度 (Jmax25)を算出した。光合成測定に用いたシュートは,シュートの投影面積と,軸から外した針葉の投影面積,シュート全体の重量と針葉の重量を測定した。冬季にも光合成能力を維持していることが確認された。針葉の投影面積あたりで表した場合,樹冠上層葉のほうが下層葉よりVcmax25Jmax25の両方で低い値を示し,冬季の特異的な樹冠内差異が明らかになった。光合成パラメータの一年間の季節変動と樹冠内差異に関して,シュートの投影面積あたりや,乾燥重量あたりでも各パラメータを表現し,光合成能力の評価手法の妥当性や問題点を考察した。


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