| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-083 (Poster presentation)

異なる温度環境で生育させた常緑性と落葉性のブナ科実生6種の初期成長と光合成

*小林 元(信大AFC・山総研),高瀬雅生(九大院・農),清野達之(筑波大・環境系),高橋耕一(信大理・山総研)

気温の異なる3試験地(信州,筑波,福岡)において,ブナ科落葉樹(ミズナラ,コナラ,クヌギ)と常緑樹(シラカシ,アラカシ,マテバシイ)実生の初期成長および光合成特性を比較した。信州(伊那),筑波,福岡の3試験地の2011年の年平均気温は,それぞれ11.4℃,14.4℃,16.7℃であった。各樹種の実生1年目の個体サイズ(D2H)と重量は,福岡試験地が信州,筑波試験地より大きい傾向を示したが,信州と筑波試験地では変わらなかった。個体サイズと重量は,それぞれ光飽和下の最大光合成速度と正の相関を示した。最大光合成速度は,気孔コンダクタンスと正の相関を示した。一方,各樹種における葉の窒素含量と比葉面積は試験地間で変わらず,両者は最大光合成速度と無相関であった。細胞間隙の二酸化炭素濃度(Ci)は,全ての樹種において筑波試験地が信州,福岡試験地より低い値を示した。一方,葉肉コンダクタンス(光合成速度をCiで除した値)は,信州試験地が筑波,福岡試験地より低い傾向を示した。以上の結果から,筑波試験地と信州試験地の個体サイズと重量が福岡試験地より小さい原因として,それぞれ気孔コンダクタンスと葉肉コンダクタンスが低いことが挙げられた。筑波試験地の気孔コンダクタンスが低い原因としては,土壌乾燥による気孔閉鎖が挙げられる。3試験地とも土壌水分は適潤状態に保たれるよう夕方に適宜灌水を行ったが,風通しの良い立地条件に設置した筑波試験地では,夏の高温時に鉢がしばしば日中乾燥に晒されていた。信州試験地の葉肉コンダクタンスが低い原因は,詳しいメカニズムについては不明であるが,生育温度環境の最も低い信州試験地では,二酸化炭素固定反応系の酵素活性が他の試験地より低い可能性がある。このことについては今後,さらなる検討を行う必要がある。


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