| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-086 (Poster presentation)
多くの植物は、個体密度が高いと隣接個体に反応して茎が徒長し、このような徒長は光の競争に有利であることが示されている。一方、隣接個体がいない場合は徒長しないことから、高くなることには何らかのリスクがあることが示唆されている。その主要なものとして個体の力学的安定性の低下がある。現在までに様々な力学的指標が提示され、徒長するとそれら指標で評価した力学的安定性が低下することが示されてきた。しかしながら、このような指標が実際の力学的失敗を説明するかどうかは、まだ分かっていない。1998年、台風5号と7号が宮城県川崎町釜房湖に到来し、湖畔のオオオナモミ群落において多数の力学的失敗個体が生じた。それぞれの台風到来後調査を行い、力学的失敗と力学的指標との関係を調べた。
個体を、倒伏個体(群落内にいる状態で茎が垂直線から90度以上曲がっている個体)、折れ個体、無事個体に分け、力学的指標によるロジスティック回帰を行った。力学的指標は、倒伏安全率(=茎を90度曲げる負荷/実際の葉・果実による負荷)、座屈(茎が自重や葉・実の重さを支えられず曲がる)安全率、風が当たったときの茎の曲率半径、風によって茎が曲がり折れることに対する安全率、を用いた。倒伏vs. 無事では、すべての指標が有意に力学的失敗を説明した。特に倒伏安全率は57%も説明した。一方、折れ vs. 無事では、どの力学的指標も力学的失敗を説明しなかった。折れのほとんどがネナシカズラの根の挿入痕で生じていたことから、折れは偶発的な外部要因が原因で生じたことが示唆された。これらの結果から、従来の力学的指標は実際の力学的失敗を有効に説明することが示された。