| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-087 (Poster presentation)
これまで、水分条件の変動下での通水機能を維持する仕組みとして、キャビテーション(負圧の増大による道管の空洞化)に対する木部の抵抗性の高さや、失水調節や貯水に基づく負圧の緩和によるキャビテーション発生の回避が報告されてきた(e.g. Sparks and Black 1999)。しかし実際には、様々な種においてキャビテーションが回避しきれずに発生しており(e.g. Miranda et al. 2010)、これらの既存の研究で指摘されてきた特性だけでは通水機能の維持メカニズムを完全には説明しきれていない。
我々は近年、木部の抵抗性の低い樹種は木部の回復性の高さによって通水機能の損失のリスクを補償する新たな可能性を提示した(Ogasa, Miki et al. 投稿修正中)。また同時に、キャビテーション抵抗性および木部の回復性は、材密度(材の単位体積あたりの乾燥重量)による制約下においてキャビテーション抵抗性と木部の回復性にトレードオフがある可能性も提示した。
材密度が高い種ほどキャビテーション抵抗性が高い傾向については、木部の力学的強度の向上の点からこれまで数多く報告されている(Hacke et al. 2001, Jacobsen et al. 2007)。しかし、材密度と回復性の関係性についてはほとんど明らかにされていない。通水機能の短期的な回復は空洞化した道管が再び水で満たされること(再充填)により起こることから、材密度が小さい種ほど道管を満たす水が豊富、すなわち貯水性の指標となるキャパシタンスが大きい可能性がある。この点について温帯性広葉樹数種を用いて解析した結果を報告する。