| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-098 (Poster presentation)

暖温帯広葉樹林に共存する27樹種の展葉タイミングとその種間差に影響する要因

*長田典之, 徳地直子(京都大・フィールド研)

春における植物の展葉時期は、植物個体の生産性に大きく影響する。このため、展葉時期の種間差は、生産性の種間差に直結する要因であると考えられる。展葉時期の種間差について数多くの情報が蓄積されつつあるが,その多くは個別研究にとどまっている。近年では数多くの植物の機能形質の種間差を整理する研究が盛んに行われている。展葉時期をこのような機能形質に関連づけることが出来れば、実際に展葉時期を調査していない種についても形質データに基づいて展葉時期を予測できるようになる可能性がある。しかし、常緑樹と落葉樹をまとめた多数の種を通して、形質と展葉時期の間に一般的なパターンが存在するのかは不明である。本研究では、2010-2012年の3年間にわたり京都大学上賀茂試験地に共存する落葉樹15種と常緑樹12樹種の展葉時期を調べ、各樹種の葉や枝の形質(光合成能力、窒素含量、葉重/葉面積比、道管径)、分布域との関連を解析した。

この結果、種によって展葉時期には大きな差がみられた。芽吹きの時期は3月中旬の種から5月中旬の種まで存在しており、平均すると落葉樹では4月上旬だったのに対して常緑樹では4月下旬だった。葉サイズが成熟した時期は、落葉樹では4月下旬だったのに対して、常緑樹では5月下旬だった。落葉樹と常緑樹をまとめると、葉重/葉面積比と面積あたり窒素含量が小さく、重量あたり光合成能力が大きい葉をもつ種ほど展葉時期が早い傾向が見られた。これは落葉樹と常緑樹で展葉時期が異なることに起因していた。落葉樹と常緑樹を別々に解析すると、落葉樹では道管径が大きい種ほど展葉時期が遅くなる傾向が見られたものの、常緑樹では展葉時期と調べた形質の関係はすべて有意ではなかった。以上の結果を元に、展葉時期の種間差について論じる。


日本生態学会