| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-100 (Poster presentation)
造林地造成とは生態学的には大規模攪乱による大ギャップの形成である。そのため若齢造林地では,大ギャップと同様,植物間に極めて強い負の相互作用(競争)が働いている。若齢造林地では,種子由来の新規加入個体や,根株からの萌芽幹などが多数発生し,良好な光環境を利用して旺盛に成長する。一般に造林地で下刈りなどの保育作業が必要とされる理由は,これらの天然更新個体からの強い競争圧で植栽木の成長が妨げられることにある。若齢造林地に出現する様々な樹種の樹形変異を検討すれば,大ギャップ形成後,そこに出現する様々な植物種が,強い競争圧の下で示す成長・物質生産戦略の多様性を明らかにできる。この多様性は,大ギャップ形成からの遷移進行,森林動態を規定する重要な要素である。
本研究は,低コスト造林技術の開発のために岩手県北部の若齢造林地に設けられた下刈り省略試験区で,常緑植栽樹種のスギ,落葉植栽樹種のカラマツ,天然更新広葉樹4種(試験地で比較的多数見られた高木樹種のミズナラ,クリ,オオヤマザクラ,ホオノキ)の樹形を比較し,樹形モデル(Halle et al. 1978の意味での)や葉寿命が異なる樹種が同一の競争環境で示す成長戦略の共通点と相違点を明らかにする。光を巡る競争での優劣は個体の樹高に大きく規定されるので,樹高に対する幹基部直径,樹冠厚,樹冠幅,当年主軸伸長量の関係をStandardised Major Axis回帰によって解析する。回帰パラメータを比較し,個体サイズに応じた樹形変異のパターンを,各樹種の樹形モデルや葉寿命と関連づける。さらに植栽における適地適木の樹形的側面など,得られた結果の施業省力化への応用についても考察する。