| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-101 (Poster presentation)
樹木の開花・結実には豊凶の周期のあることが知られている。雌雄異株樹木に関しても豊凶の周期があり、雌雄で開花が同調することが指摘されている。しかし、長期的かつ量的な研究データはそれほど多くない。本研究では、冷温帯の渓畔林の落葉高木であるシオジ(Fraxinus platypoda)を対象として23年間にわたり開花量を測定した。埼玉県秩父山地のシオジ林に0.54 haのプロットを設置し、1991年から2012年までシオジの雌雄個体の開花量を調査した。開花量は全く開花なしのレベル1から大量開花のレベル5の5段階に分けて、双眼鏡により把握した。シオジは雌・雄・未成熟がそれぞれ29・22・11個体で調査期間内に性転換は見られなかった。23年の調査期間の間に、それぞれ3・1・6個体が枯死した。また、調査開始前と調査終了時に胸高直径を測定した。胸高直径は雌雄個体では差がなく、雌雄と未成熟の間に有意な差が見られた。
シオジの開花には明らかな年変動が見られた。調査全期間の開花レベルの変動係数から雌個体の方が開花の変動が大きいことが示された。また、雌雄個体ともに年変動に明らかな個体差が見られた。1990年から2001年までは雌雄の開花が同調する傾向にあり、3から4年に一度ほとんど開花を行わない年が訪れた。これらの翌年は、雌雄個体ともに大量に開花した。しかし、2002年以降は年変動のパターンが変化し、雄個体は毎年大量開花を、雌個体は隔年に大量開花を示すようになった。また、雌個体も年々開花量が増加する傾向を示した。2002年以降の開花の変動パターンの大きな変化は長期的な気候変動が影響している可能性も考えられる。