| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-106 (Poster presentation)
ヒサカキは集団内に雌個体、雄個体および両性個体を共に有する不完全雌雄異株である。これまでの調査より、雌性繁殖成功が雌個体は両性個体より高いこと、両性個体と雄個体の単独花粉と混合花粉を用いた強制他家受粉処理による雄性繁殖成功は雄個体が両性個体より高いこと、混合受粉処理は単独受粉処理より高いことを明らかにした。しかし、以上の結果からは両性個体の存在意義を明らかにできておらず、その解明は不完全雌雄異株という性表現の起源と進化における理解を深めることに役立つ。そこで本研究では、同一個体内に両性花と雌花の両方をつける雌性両全性同株個体に着目し、強制他家受粉処理によるヒサカキの同個体における雌花と両性花の果実と種子生産を両性個体と雌個体と比較した。
調査は、名古屋大学の東山キャンパスに広がる二次林の3集団を用いて、2011年2~12月に実施した。ここでは、雌個体が34.6%、雄個体が32.5%、雌性両全性同株個体が23.6%を占めている。自然状態での観察とともに、雄個体の混合花粉を用いて、雌性両全性同株個体、両性個体および雌個体における強制他家受粉処理を実施し、結果率、果実あたりの種子数、果実と種子の乾重を調べた。その結果、強制他家授粉処理では、種子重以外の個体間には性差があり、同一個体における雌花と両性花の間には差はなかったものの、雌個体より低く、両性個体より高い値を示した。一方自然状態では、果実重以外の個体間に性差が認められ、結果率と種子数が同一個体における両性花は雌花より高く、種子重はその逆であった。以上より、雌花が混ざる雌性両全性同株個体が両性花のみの両性個体より有利であると考えられた。