| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-109 (Poster presentation)
樹木の結実豊凶(マスティング)のメカニズムについて、種子生産の豊凶変動を植物体内の貯蔵資源の経年変動から説明しようとする資源収支モデルなどが知られている。しかし、最近これらのモデルに対しては、「枝レベルでは、種子生産には貯蔵炭水化物(NSC)よりも結実年の光合成産物が重要である」といった反証結果も報告されており、マスティング機構を巡る議論は今日も続いている。
われわれは、これまで窒素化合物(N)とNSCの樹体内の貯蔵機能に着目し、NSCの配分や貯蔵など生理的現象の解析を通じて、結実豊凶の機構解明に取り組んできた。その結果、以下のような重要な事実を見いだした。①種子生産にはその年の光合成産物が利用され、貯蔵NSCはほとんど利用されない(Hoch et al, Oecologia, in press)。②種子の成長期には、葉や枝がNの貯蔵器官として機能し、そこからNの一部が種子へ転流される(Han et al, Annals Botany 2011)。今回、種子生産に係わる貯蔵Nと土壌から吸収したNの貢献度を評価するために、結実と非結実のブナ3個体ずつを用いて、展葉期に15Nを含む水溶液を地表面に撒きラベリング実験を行った。その後、定期的に葉・枝・種子を採取し、それぞれの窒素濃度と15N同位体比を分析した。その結果について報告する。