| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-110 (Poster presentation)

デュオダイコガミーと自家不和合性がクリの個体内・集団内の開花フェノロジーに与える影響

*長谷川陽一(秋田県大・木高研), 陶山佳久, 清和研二(東北大院・農)

デュオダイコガミー(個体内の開花パターンが雄花→雌花→雄花)は、まれな開花様式であり観察例も少ないことから、その繁殖生態学的意義はよくわかっていない。そこでデュオダイコガミーで自家不和合性であるクリの開花フェノロジーを、天然更新の二次林においてツリータワーを用いて8個体、地上から双眼鏡を用いて49個体で調査した。また、これをデュオダイコガミーで自家和合性であるBridelia tomentosaの開花フェノロジー(Luo et al. 2007)と比較した。

クリの開花は、Bridelia tomentosaと比較して、集団内の雄花と雌花の開花時期がより一致していた。さらに、クリにおいて1番目と2番目の雄花の開花数を足し合わせることで、雌花の開花時期との一致がより強くなった。一方で、個体内における雄花と雌花の開花時期もオーバーラップしていた。この様な開花様式は、自家受粉の頻度を高めると考えられ、実際にクリにおいて自家受粉率が90%と高いことがこれまでの研究で明らかになっている(Hasegawa et al. 2009)。

これらのことから、クリは自家不和合性によって自殖による適応度の低下を回避しつつ、デュオダイコガミーによって集団内の雄花と雌花の開花時期を一致させることで、個体間の送受粉の頻度を高める戦略をとっていると考えられた。

またクリでは、雄花と雌花の開花時期が個体内および集団内で集中する選択がかかっていると考えられ、自家和合性のデュオダイコガミーであるBridelia tomentosaAcer(カエデ属)に見られる、性表現の多型(雄個体や雄先熟・雌先熟の個体が混在する)は生じにくい状況にあると考えられる。


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