| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-120 (Poster presentation)
熱帯フタバガキ林におけるDipteocarpus sublamellatus の葉形変化と葉上着生生物
*山田俊弘 、奥田敏統(広島大学総合科学)
熱帯フタバガキ林に出現するDipteocarpus sublamellatus (フタバガキ科)は樹高50mを超える大木となる。この種は、樹高成長に伴い葉の形を変化させていた。樹高1mほどの個体についた葉の先端は、極端に尖っていた。葉の幅/長さの値は小さく、細長い形をしていた。樹高の小さい個体は暗い林床に生えることになるため、陰葉の特徴である薄い葉をつけていた。それに対し林冠に達した個体についていた葉の先端部はわずかに尖るだけであった。また葉の形も丸くなっていた。明るい環境にある葉のため、葉も厚かった。熱帯樹木に特異的な葉の先端が極端に尖る葉形はドリップチップとよばれ、葉についた雨水などを素早く排水する役を担っていると信じられている。小さい個体は、薄い葉を水平に展開する性質を持っていた。このような葉に水滴が付くと、水はトリップチップのほうへ流れていた。ドリップチップは排水に役立っているようである。一方、林冠に達した個体は堅い葉を垂直に近い角度で展開させていた。木の葉に水滴がついても、水は葉の基部に流れるだけだった。Dipteocarpus sublamellatusの葉形の変化は、葉上の水の流れと関係があるようだった。Dipteocarpus sublamellatusは暗い林床にいるときはドリップチップを発達させることで排水を促し、明るい林冠に達すると、葉を垂直に展開することで排水を促しているのだろう。
加えて、排水の適応的な意義も考えた。排水には葉上着生生物を増やさない役割があるかもしれない。そこで現在行っているタワーを用いた葉上着生生物の実験も紹介する。