| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-140 (Poster presentation)
農地生態系は、種子食昆虫による雑草種子低減や土着天敵による害虫抑制など、様々な生態系サービスを提供している。これらの有用生物による生態系サービスの持続的利用のためには、景観スケールでこれらの生物種を保全することが重要である。欧米の畑地においては、農地の景観構造と有用生物種の関係についての研究が進展しているが、水田におけるこれらの知見は少ない。農地の多くを水田が占めるモンスーンアジア地域において、土着天敵等の有用生物による生態系サービスを保全、活用していくためには、水田におけるこれらの発生量を決める景観要因を理解することが重要である。そこで本研究では、水田における種子食昆虫(コオロギ類とゴミムシ類)および土着天敵(コモリグモ類)の発生量と、周辺景観の関係について調査を行った。
静岡県西部地域における周辺景観の異なる水田38圃場の畦畔において、2011年9月下旬~10月上旬に、コオロギ類、種子食ゴミムシ類およびコモリグモ類の発生量を粘着トラップにより調査した。各水田の周辺半径100~500m範囲の土地利用を調査し、これらの生物の発生量と相関の高い土地利用を、重回帰分析により解析した。コオロギ類、種子食ゴミムシ類およびコモリグモ類ともに、圃場周辺半径300m~500m範囲における水田畦畔面積率が、これらの発生量に正の影響を及ぼしていた。本研究より、水田畦畔の面積割合の高い景観に位置する水田では、これらの種子食昆虫および土着天敵の発生量が多いことが明らかとなり、これらによる雑草種子低減および害虫抑制の生態系サービスを活用しやすいと考えられた。