| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-141 (Poster presentation)

環境アセスメント調査データを用いた配慮書段階における陸生脊椎動物重要種の生息可能性評価

*阿部聖哉,松木吏弓(電中研・生物環境)

平成23年に環境影響評価法が改正され、新たに計画段階配慮書の作成が義務付けられた。計画段階配慮書の作成においては、原則として既存資料を用いた簡易な方法により、事業が及ぼす重大な環境影響を予測する。動植物の項目においては国や県で指定されているRDB種などの重要種が予測の対象となるが、二次メッシュや市町村単位など粗いスケールの分布情報が多く、数ha程度の開発事業では空間スケールが整合しない。本研究では、① 図鑑などの種の生態情報をもとに生息可能性の高い植生区分を推定する方法と、② 全国の過去の環境アセスメント調査データから回帰モデルを作成して推定する方法を用いて、対象地域(電中研我孫子地区構内約17ha)における重要種の生息可能性を推定した。千葉県レッドデータブック等の既存文献では、対象地周辺の重要種は哺乳類2種、鳥類64種、爬虫類5種、両生類4種が記録されていた。まず、図鑑等の生態情報と植生区分をもとに、各記録種の対象地における出現可能性を推定した。その結果、哺乳類2種、鳥類33種、爬虫類3種、両生類3種が出現可能性のある種と推定された。生態情報にもとづく方法では、リストアップされた種の半数以上が生息ありと判定され、対象地域で記録がないような種も多数含まれていた。次に、全国の過去の環境アセスメント調査データをもとに、調査ルート周辺0.5、1、2kmバッファ内の植生区分を説明変数としてロジスティック回帰モデルを構築した。回帰モデルを用いて生息可能性を補正した結果、対象地で出現可能性が高いと判定された重要種は、鳥類5種のみとなった。既存の分布データよりも細かい空間スケールで重要種の影響予測を行うためには、過去のアセスメント調査結果の活用が有効であると考えられる。


日本生態学会