| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-143 (Poster presentation)

仙台湾岸域における東日本大震災被災前後の景観構造変化 -衛星リモートセンシングによる解析-

*原慶太郎 ・趙憶・富田瑞樹(東京情報大・環境情報),平吹喜彦(東北学院大学・地域構想),平泉秀樹(ラムサール・ネットワーク日本)

2011年3月11日の東日本大震災時における大津波が、仙台平野域に与えた景観スケールの影響について、衛星データ(SPOT-5 HRG-2: 2010/10/02,2011/11/02; GeoEye-1 : 2010/04/04,2011/03/24)等の解析結果をもとに明らかにし、当該地位の景観再生の方策に関して議論する。当該地域には、海側から内陸に向かって、浅海(外浜)、前浜、後浜、砂丘、運河(貞山堀)、潟湖、後背湿地から水田などの耕作地、住宅地などが成立していた。貞山堀の土塁には江戸時代からマツが植林され、その海岸側および内陸側に後代にマツの植林が拡げられた。平野部の浜堤上に成立した農村地域には、いぐね(家久根、居久根)と呼ばれる屋敷林が成立していた。被災地域では、大津波は前浜では地面表層を攪乱するだけであったが、内陸側のクロマツやアカマツを主体とする海岸林は根返りや幹折れなどにより多くが流出した。津波は防潮堤などで堰き止められ、震災から数日から数週間にわたって池沼のような状況となった。屋敷林はスギの高木が優占していたが、浸水した区域では葉が赤変し枯死した。その結果、被災地域では、防潮林のマツ林が微高地の一部を除き消失し、また、屋敷林でも針葉樹を中心に枯死が進んだ。被災前は長大なコリドーの役割を果たしていた海岸林は孤立化が進み、パッチのコア面積も大きく減少した。かろうじて残存したマツ林や屋敷林などが野生動植物の貴重な生息地となっており、今後の景観再生にあたっては、モザイク構造の再構築と樹林地の連結性の保持などが重要な課題として挙げられる。


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