| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-147 (Poster presentation)

東シベリアにおける湿潤化による永久凍土荒廃とカラマツ林変化

*飯島慈裕(海洋研究開発機構), A.N. フェドロフ(永久凍土研究所), 阿部このみ, 伊勢紀, 増澤直((株)地域環境計画)

永久凍土が広く分布する東シベリアでは、2004年冬以降、冬季の積雪と夏季の降水が大きく増加する湿潤的な気候が継続し、永久凍土表層の融解を伴い活動層内の土壌水分が大幅に増加した。この土壌湿潤化は、カラマツからなる北方林の生育環境を悪化させ、広域的に森林の荒廃が進行した。本研究では、ヤクーツク近郊のレナ川右岸・左岸での衛星データ解析に基づき、湿潤化による水域の拡大状況と、それによる永久凍土・活動層変化を伴う北方林変化域の抽出を試みた。

2006~2009年の夏季のALOS- PALSAR画像から、ジオコーディングとノイズ軽減の平滑化処理を行った後、マイクロ波の後方散乱係数の閾値から水域の教師付分類を行い、複数年度の水域分布の変化を抽出した。また、同期間のALOS-AVNIR2画像から、草原と北方林の教師付分類を行い、同様に複数年度の北方林の変化を抽出した。

レナ川左岸は、地下氷が少ない砂質ロームからなる河岸段丘上に北方林が広がっており、凍土融解に伴うアラス湖沼は少ない。この地域では、2006~2009年にかけて段丘を刻む谷筋に沿って水域が拡大し、その谷筋に森林の変化域が抽出された。一方、レナ川右岸は、凍土氷を多く含む平地が広がり、アラス湖沼の密度が非常に高い。そこでは、同期間にアラス湖沼の面積が拡大し、湖沼の周囲を囲むように、森林の変化域が広がる様子が抽出された。これは、左岸では谷や地形的に平坦になった地域のカラマツが選択的に枯死し、右岸ではアラスの拡大と共に縁辺部のカラマツが倒伏、枯死していた現地の観察結果ともよく一致していた。以上から、ALOS衛星データによる、水域・森林変化域を抽出し複合させる手法によって、湿潤化が永久凍土、森林荒廃をもたらす一連の現象を広域的に捉えられる可能性が確認された。


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