| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-151 (Poster presentation)

カンボジアにおける森林減少の要因と歴史

*辻野亮(京都大・霊長研),加治佐剛(九州大・農),湯本貴和(京都大・霊長研)

カンボジアでは、1970年ごろから厳しい森林減少•劣化が起こっている.カンボジアにおける森林消失の歴史を再構築するために,カンボジアの森林被覆変化とその駆動原因に関連する林業や農業,人口,土地利用パターン,社会経済状況などの文献と統計情報を調査した.

1960年代にはカンボジアの70%以上が常緑/落葉樹林などの森林に覆われていた.しかし森林面積は,1960年代初頭に13.3Mha(国の面積の73.3%)から,1973年の12.7Mha(70.2%),1992年には11.2Mha(62.7%),2006年の9.8Mha(54.1%)にまで減少した.そのほとんどはおそらく人間の活動によって引き起こされたものと考えられる.2000年代の森林破壊の速度は1990年代に比べて遅くなったが,常緑樹林カテゴリの分布面積減少状況から判断して,森林劣化は国全体で進行中である.

森林消失の主な直接原因は,1)森林伐採:大規模なコンセッションから家族ぐるみの伐採まで,2)農業の拡大,が挙げられる.その他にも,3)戦争,4)人口増加と人口の移動,5)木材や農産物の国際・国内需要,6)その他(汚職,政策の失敗,経済成長など)は,間接要因として挙げられる.森林消失の要因は,歴史を通じて複雑な要因によって構成されてた.

50年間のカンボジアの森林減少の歴史は4つのステージに分けられた.1)1960年代:顕著な消失は起こっていない,2)1970~1993年:政治的不安定性とゆるやかな森林消失の段階,3)1990年代:戦後復興と国際需要に後押しされた急速な森林減少の段階,4)2000年代:ゆるやかな森林減少と急速な農地拡大の段階.


日本生態学会