| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-155 (Poster presentation)

「森は海の恋人」か?:厚岸湖における集水域の土地利用変化とプランクトン群集(予報)

鎌内宏光(北大・厚岸)

陸域と水域の様々な相互作用のなかでも森林と海域との関係性の解明は、海に囲まれ国土の大部分が森林に覆われる我が国では主要な研究課題の一つである。「森は海の恋人」等の標語としてその重要性は広く認識されているが、実証的データは少ない。

生態系操作としての集水域の森林伐採・再生は、伐採と再生が林分単位で徐々に起る場合には集水域全体では森林の増減はほとんど無く、従って経時的な水域の反応から土地利用改変の効果を検出することは難しい。しかし北海道では1)陸域の人為的改変が殆ど無い明治以前、2)大規模な森林伐採を伴う昭和30年代頃までの開拓、3)現在に至る植林事業による森林の回復過程、という経過を辿っている。また近代政府が主導したので開拓当初からの地図や各種統計資料が利用出来る可能性がある。従って明治以降の集水域における土地利用改変と水域の経時変化の対比によって集水域の土地利用改変に対する水域生態系の反応を解明することが可能と思われる。本研究では道東の別寒辺牛川とその河口湖である厚岸湖及びその集水域の長期変化を明らかにするための予備調査を行った。

明治30年以降の旧版地形図によれば1940年代に農耕地が拡大したが、林業統計の単位である町村の境界と集水域界が一致しないので森林資源量変化の復元は困難と思われた。1984年以降の流入河川水質では有機物負荷が漸減した。1978年以降の厚岸湖の水質はCODが現在までに約2倍になる一方で塩分は低下していた。浮遊珪藻の種組成は1948年と2003年の調査で共に出現したのは7分類群で、これは前者の47%、後者の5%に相当したが、出現種数が大きく異なっており分類精度の影響が示唆された。本研究では集水域の変化は部分的に再現可能だが、水域ではデータが不十分なことが明らかとなった。厚岸湖は閉鎖的汽水湖なので堆積物の解析により水域の変遷を復元可能と思われた。


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