| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-158 (Poster presentation)

森林火災跡地に残された微粒炭等炭化物についての基礎的研究(2)

京都精華大・人文

土壌や泥炭に含まれる微粒炭などの炭化物は,過去の植生や植生に火が入った履歴を知る重要な手がかりとなるものではあるが,その基礎研究は,まだかなり不十分な段階にある。そのため,たとえば微粒炭が森林火災由来か,あるいは野焼き由来かさえも,まだ容易にわからない状況にある。本研究は,森林火災から間もない場所の観察とそこで採取した試料の分析により,森林火災跡地の微粒炭等炭化物について考察したものである。

調査地は,2012年10月15日に森林火災が発生した広島県三原市深町の森林火災跡地である。2012年10月20日にその森林火災から間もない現場の様子を観察するとともに,微粒炭等炭化物が多く含まれた地表部の試料を10箇所で採取した。それらの試料は,乾重約0.3gを常温の室内で水酸化カリウム溶液(10%・48時間),過酸化水素(6%・12時間)で処理することを中心にして微粒炭等炭化物を抽出した。抽出した微粒炭等炭化物は,それぞれ1mm,500µm,250µm,125µmのメッシュの篩を用いて篩分けし,それら4種の篩に残ったものの量を測定するとともに,プレパラートを作成した。そのうち,炭化物の表面形態を主に観察したのは125µmのメッシュの篩に残ったもの(125-250µmクラス)で,その観察は落射顕微鏡を用いて主に400倍の倍率で観察し,意図的にならないよう順次100個の微粒炭を8つタイプと「その他」に分類した。

本研究により,たとえば,微粒炭のタイプ分類のみで,微粒炭が森林火災由来のものか草原が燃えたことによるものかを判断することが容易ではないことの理由について考えることができた。また,森林火災跡地の方が野焼き跡地に比べ,圧倒的に微粒炭等炭化物の量が多く,またサイズの大きな炭化物の割合が大きいことなどが確認できた。なお,調査地における炭化物の量の多さは,森林の腐植層も燃えていることが大きな要因と考えられる。


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