| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-159 (Poster presentation)

高山帯植生を対象とした国立環境研究所温暖化影響モニタリングの紹介

*小熊宏之(国環研),井手玲子(国環研)

高山植物など極めて厳しい条件に生息する高山帯の生態系は、地球温暖化に対して最も影響を受けやすい生態系の一つとしてモニタリングの必要性が指摘されている。植生の活動期間や季節変化(フェノロジー)を始め、長期的な植生分布の変化を広域かつ多点で地上調査するのは大変な労力が伴うことから、デジタルカメラを観測点に固定し任意の頻度で撮影を繰り返す、いわゆる定点撮影が観測手段の一つとして期待されている。このような背景から国立環境研究所地球環境研究センターでは日本国内の高山帯を対象とし、積雪・融雪時期や植物の活動を多点で把握することを目的として、市販のデジタルカメラを山小屋などに常設した定点撮影によるモニタリングを開始した。

現在北アルプス4サイト(立山、槍ヶ岳、西岳、蝶ヶ岳)、中央アルプス木曽駒ヶ岳(極楽平)、利尻岳に常設撮影点を設けた。詳細な植生フェノロジーの観測にはデジタル一眼レフカメラを用い、山小屋の営業期間中は1時間おきにRAWとJPEG画像を同時に撮影するほか、槍ヶ岳、蝶ヶ岳サイトには-40℃までを動作保証範囲とする監視カメラを用い、冬季間も撮影を継続している。撮影画像はカメラの内部標定と撮影対象の標高データに基づく正射投影を行い、撮影画像と地形図の重ね合わせを実現させることにより、積雪範囲や植生群落の面積や標高値を求められるようにしているほか、画素毎に格納されているRGB三原色のカウント値を用いた演算処理により植生の展葉時期や紅葉時期を面的に把握することを目指している。本モニタリングで得られたデータはHPで公開を予定しているほか、今後さらに観測点を増やし、山岳情報の面的な収集と蓄積を行う予定である。


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