| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-160 (Poster presentation)
公園などの都市緑地は、都市生態系において大きな役割を果たしていることが予想され、生物多様性に十分に配慮した方法で管理することは重要であると考えられる。本研究は、生態情報が充実していて観察しやすく、生活史を通して植物を利用するチョウに着目し、その多様性に影響を与える緑地およびその周辺の環境要因の関係を解明することを目的とした。
調査地は、東京都心のおよそ9km四方内に位置する大型緑地8箇所(代々木公園、新宿御苑など、7-124 ha)および、その周辺の小型緑地10箇所(0.2-2.7 ha)とした。大型緑地については2009年春から、小型緑地については2010年春から2011年にかけて決まったルートを歩き、遭遇したチョウの種と個体数を記録した。また、各緑地およびその周辺の環境要因として、緑地の全体面積、植物被覆率、植生、食草の有無、緑地間距離、等を調査した。得られた種数および種多様度を目的変数、緑地の面積や植物被覆率などの環境要因を説明変数とし、統計モデルを構築して解析した。
その結果、観察されたチョウの総種数は37種で、全緑地で観察されたのはアオスジアゲハ、アゲハ、ヤマトシジミであった。森林性の種を多く含むタテハチョウ科、ジャノメチョウ科は、全体的に観察数が少なかった。また、大型緑地の方が、小型緑地よりも種数や個体数が多い傾向にあったものの、大型緑地、小型緑地同士での比較については、種数や多様度は面積と有意な相関関係は見られなかった。小型緑地では、総種数および森林性種の種数に対し、各緑地の周辺500m以内にある1ha以上の緑地数が、有意に影響を与えていた。このことから、近隣緑地同士がネットワーク化することで、緑地のチョウの多様性を高めている可能性が示唆された。