| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-163 (Poster presentation)
近年、都市の高温化が進行し人間の活動に支障をきたすとして危惧されている。この対策として都市では壁面、屋上緑化や街路樹の設置などの都市緑化によるCO2吸収効果と蒸散による冷却効果を期待した活動が盛んに行なわれている。しかし、都市部の植物は特に成育空間や栄養面で制限がかかっており、夏の間、強光や乾燥ストレスにさらされる環境で成育することを強いられている。特に乾燥ストレスは気孔を閉鎖させる要因となるため、CO2吸収が低下し、光合成速度の減少を引き起こすことが分かっている。乾燥ストレスは植物の生育に大きい負荷をかけ、街路樹を設ける意義のひとつであるCO2の吸収や蒸散冷却効果にも影響し、温暖化の軽減に寄与するといった望ましい効果が得られない可能性がある。このような悪環境下における都市の植物の光合成や生育が、乾燥ストレスによってどのように影響されているかを調べるために、日本における低木の街路樹の種類では最も多く植えられているツツジ類のヒラドツツジ(Rhododendron × pulchrum)を用いて実験を行った。樹高約40cmのヒラドツツジを1.8Lのポットに植え温室内で育て、毎日1回潅水を行ったものと2日ごとに1回潅水を行ったものに分け、2012年8月から11月まで栽培した。それぞれの条件から3個体ずつ選び、月ごとの樹高、幹の太さと枝の長さを測定し、基部から8~9枚目の十分に展開した1枚の葉を選びLi-6400を用いて光-光合成曲線とA-Ciカーブを得た。特に高温や強光が見られた9月においては、樹高の成長率や光合成曲線から得られた最大光合成速度等のパラメータの低下が、毎日潅水した個体に比べ2日ごとに1回潅水した個体に見られたが、10月には乾燥頻度が成長や光合成パラメータに与える影響は顕著ではなかった。