| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-165 (Poster presentation)

佐鳴湖流域の生態系:汚濁と流域環境、生態系の関係

*戸田三津夫(静岡大・工),小野田貴光(静岡大院・工),安立亮一(静岡大・工),辻野兼範(静岡県立浜松北高校)

静岡県西部(浜松市)の佐鳴湖は、浜名湖東方に付随する面積1.2 km2、深さ2 mほどの小さな海跡湖で汽水湖である。浜松市中心地から約5kmの距離にあり、周辺が昭和30年代以降に急速に市街化したため汚濁が進み、2001〜2006年度には国内湖沼COD汚濁度ワースト(COD年平均値11~12 ppm)となった。汚濁する以前は好漁場で遠方にフナを大量に出荷し、地引き網でウナギを漁獲していた記録がある。昭和に入っても、漁や遊魚は行われ、周辺小中学校では遠泳などに利用し、市民向けの水泳場も開設され、周辺の住民はエビやシジミを採りおかずにしていた。浜松への水運でも重要な役割を果たし、浜松城の石材は佐鳴湖を経由して運ばれた。

現在の佐鳴湖はCOD値が8 ppm程度となり、ワースト5を脱し悪臭の発生や魚の大量死などはない。湖内には50種以上の魚類、その他甲殻類、鳥類も生息し、市民がウナギやハゼ、フナを釣っている姿をよく見かけ、また、静岡県内有数のウナギ漁場でもある。湖岸は公園として整備され、周遊路はジョギングや散歩をする多くの市民がいる。

佐鳴湖は海跡湖であり、水源は三方原台地からの湧水である。しかし、過去の文献にあるような豊富な湧水は無く、現在の汚濁改善はひたすら生活排水や産業廃水などの流入負荷の低減により達成された。今回の発表では、都市近郊の汽水湖としての環境と生態系の変化について、過去の文献記述、最近の調査データから考察した結果を示す。また、生態系復元のため行っているヤマトシジミの復活プロジェクトの成果にも触れる。すでに経代種苗生産が軌道に乗り、全国的にシジミ資源が減少しているなか、宍道湖の約3倍の速さで成長することと湖内での小規模繁殖などが確認されている。


日本生態学会