| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-268 (Poster presentation)

真社会性アブラムシの兵隊に対してスペシャリスト捕食者の卵は対抗的な形質をもっている!?

*服部 充(信州大院・総工・山岳),市野隆雄(信州大・理・生物)

捕食者は、被食者を効率的に捕食できる形質や被食者の防衛形質に対して自身の生存を助けるような形質をもっていることがある。特に、捕食者の無防備な生活史段階(例:卵)において、被食者の防衛形質に対する対抗的な形質は捕食者の適応度を高めるうえで重要であると考えられる。そこで、本研究では防衛に特化した兵隊カーストを産出する真社会性アブラムシのササコナフキツノアブラムシのスペシャリスト捕食者であるセグロベニトゲアシガの卵がアブラムシの兵隊カーストに対する対抗的な形質をもつという仮説をたて、検証した。兵隊カーストの存在する環境下と兵隊の存在しない環境下でセグロベニトゲアシガ卵の孵化率が異なるかどうかを調べた結果、兵隊カーストの存在下でもセグロベニトゲアシガ卵の孵化率は、兵隊カーストの不在下における孵化率と有意に変わらず、高かった。また、本研究において兵隊カーストは、稀にセグロベニトゲアシガ卵に対し前脚を開閉し、攻撃行動を示すこともあったが、この攻撃行動はすぐ中断された。このような攻撃行動の中断は、兵隊カーストが同種他個体を間違って攻撃したときにも見られる。これらのことは、セグロベニトゲアシガ卵がササコナフキツノアブラムシに化学的に擬態していることを示唆している。本研究の結果は、スペシャリスト捕食者の兵隊カーストに対する適応の証拠を与えるものである。


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