| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-271 (Poster presentation)
エゾサンショウウオの幼生とエゾアカガエルのオタマジャクシは互いの存在に応じて対抗的に形態を変化させる。捕食者のエゾサンショウウオ幼生はオタマを丸呑みしやすいよう顎幅を大きくする一方、エゾアカガエルのオタマは丸呑みされないように皮下組織を厚くし頭胴部を膨らませる。理論研究からこのような対抗的な表現型可塑性は軍拡競争のごとく共進化することが指摘されている。互いの形態変化が選択圧となり、共進化しているならば、捕食者と被食者の対抗性は遺伝集団間で正の相関を示し、より大顎化できるサンショウウオはより強く膨らむことができるオタマと共存すると予測される。今回私たちは種間比較研究によりこの仮説を検討した。エゾサンショウウオとエゾアカガエルの比較対象として、近縁種で類似した環境に生息するクロサンショウウオとヤマアカガエル・ニホンアカガエルを用いた。捕食者のサンショウウオ2種と被食者のカエル3種を1種ずつペアにした処理区と、ペアにせず1種だけで育てた処理区を用意し、形態を比較した。実験の結果、エゾサンショウウオはクロサンショウウオに比べ、オタマがいなくても顎が大きいこと、オタマがいるとさらに大きな顎を持つことがわかった。一方で3種のオタマはサンショウウオがいないときには形に違いがないが、サンショウウオがいるときには、エゾアカガエルがヤマアカガエルやニホンアカガエルよりも強く膨満化することがわかった。これらの結果は、捕食者と被食者の対抗的な可塑性の共進化仮説を支持し、エゾサンショウウオとエゾアカガエルが対抗的な形態の発現をとおして互いの形態発現能力に強い選択圧をかけあってきたことを示唆する。