| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-273 (Poster presentation)
大きく太い嘴や流線型の体型といった生物の形態が何らかの機能を反映していることを見いだすのは、生物学の基本的な興味の一つである。形態はサイズ(大きさ)とシェイプ(形状)の2つの幾何学的要素に分解して、生理的あるいは行動的特徴や環境との関係を統合的に分析することで、その機能が解釈できるようになる。
エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、生態学的幾つかの状況で可塑的に多様な形態を発現することから、環境に対する生物の表現型の可塑的応答についての研究に適している。エゾサンショウウオの幼生は、高密度の生育環境では、大きな顎で口頭部が幅広の形態で共食いの性質を持つ個体が生じ、形態の異なる型として区別される共食い個体とそれに食われる個体が混ざった2型化集団となることが調べられている。
共食い個体は大きな顎を有し、同種を食うことで共食いをしない個体よりも大きくなる傾向があるため、これまでの研究では、集団中の個体の型は、十分に共食いが起こった発育時期に、サイズとサイズで補正した顎幅によって見極めていた。
本研究は、共食いが生じる初期段階で型の分化がどのように進むのかを調べることを目的とした。孵化数日後、1回の共食いが起こって、共食い個体が餌食を消化した直後の同時期に全ての個体の形態的特徴がどのようになるのかを、幾何学的形態計測学の方法によって調べた。幾何学的形態計測学は、形態を幾何学的包括情報として数理的に解析する方法である。発表では、ランドマーク座標によって個体の形態特徴を記録し、「プロクラステス変換重ね合わせ法」によってサイズとシェイプを分離して幾何学情報の比較分析を行った結果を説明し、共食い型や被共食い型の形態について、従来の計測指標による捉え方と比較考察を行う。