| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-274 (Poster presentation)

オトシブミと共生する細菌の探索

*三宅崇, 高田惟名(岐阜大・教育)

オトシブミ科昆虫は、植物の葉を巻いてその中に卵を産みつけ、ゆりかごのような“揺籃”を形成し、幼虫は成虫になるまでその中で葉を採食する。最近(日本生態学会第59回大会)、エゴノキ生葉—オトシブミ成虫間での窒素同位体比の濃縮係数から、オトシブミ幼虫が葉のみから窒素源を得ているのではなく、空中窒素の固定が関わっていることが示唆され、窒素固定微生物の関与が推測された。そこで本研究では、エゴツルクビオトシブミ(エゴ)を用いて、分子学的な手法から窒素固定に関わる微生物の探索を調べた。

岐阜県内でエゴツルクビオトシブミおよびヒメクロオトシブミの成虫および形成されていた揺籃を採集した。捕獲した成虫は飼育して卵やフンを採取し、その後成虫個体を解剖し、腸を摘出して昆虫リンガー氏液中で保存した。揺籃からは卵、幼虫を採取した。これらからDNAを抽出し、窒素固定微生物がもつ窒素固定に関与する酵素(ニトロゲナーゼ)の遺伝子であるnifHのユニバーサルプライマーを用いてPCRを行ったところ、エゴの卵、幼虫およびヒメの幼虫から、想定されるサイズの増幅が見られた。一方、成虫の腸、フン、揺籃(葉)からは増幅は見られなかった。増幅がみられたものについてクローニングを行い、配列解析した結果、複数の配列が得られた。それらをBlast解析したところ、エゴ卵から得られた配列は①大西洋沿岸の海洋中から単離された生物由来nifH、②ヤナギゴケ科タチハイゴケから単離された生物由来nifH、③イネ科植物から単離された腸内細菌科Raoultella terrigenaのnifHと相同性があった。一方、エゴ幼虫からは卵と同様に①②③と相同性がみられた配列以外に、④イネ科エンバクの葉から単離された生物由来nifH、⑤腸内細菌科Pontoea sp.のnifHと相同性が高い配列が得られた。


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